記録簿

小説とか映画とか音楽とか展覧会とかライブとか、そういうやつの感想をつらつらと残していきます。

映画「ミュージアム」の感想。

映画『ミュージアム』×ONE OK ROCK 特別映像公開!

 

本予告のほう何で貼れないんだろ。

グロテスクな描写は得意ではないのですが、映画化を知った時から期待していた作品なので観賞しました。原作コミックは読了済。

以下、若干のネタバレを含みます。できるだけ避けて書いたけど、気になる方はスルーで。

 

 

 

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原作と異なる結末と謳われていましたが、相違点はほぼなく原作と同じように話が進んでいきます。ただ、映画版のほうが後味の悪さは軽減されていて、それ故ハッピーエンド感も強くなっていた印象。

その色を強めるのが、映画版オリジナルキャラクターの橘幹絵。彼女のお陰でこの物語は大団円を迎えたといっても過言ではないが、それは原作のラストを知っている人間の感想になるのだろう。それだけに、彼女が最後に"再会"する相手との過去をもっと掘り下げてほしいという思いは残ったかな。いや、蛇足になってしまうだろうか。

グロテスクでなかなか衝撃的なシーンは数多いが、原作よりも全然ぬるい。観やすいです。先述のとおり自分はグロテスク系の映像があまり得意ではないですが、普通に観れました。まぁどんなものが出てくるかを原作読んで知ってるというのもあるんだろうなぁ。

それでも、「ここまで映像化するか!」というところまできっちり映画に入ってました。特報でも扱われていた「母の痛みを知りましょうの刑」は、殺害されるシーンは勿論被害者の自宅シーンから殺害シーンまで原作そのままでよかった。流石に殺されていく過程は省かれてたけど。そういうことです、原作より観やすいってのは。原作の中の目を背けたくなるような描写を抽出してカットしてる感じ。だから原作と本筋は一緒なの。グロい映画というより、スリリングな映画という印象。コミックスのページを捲る瞬間にグッと息を呑んでしまうあのドキドキ感は健在です。

カットされなくて嬉しかった場面といえば、最後に登場するフリーライターがとある人物に取材を持ちかける際にとある質問を投げかけるのですが、それが残っていてよかった。それはこの作品を「とある刑事と猟奇殺人鬼の闘い」として傍観していた我々に、物語そのものをノンフィクションの世界にぐっと近付けてくるような役割を果たしている重要な台詞。勿論彼の一眼レフは演出・効果として他の役割も果たすのだけれど、原作読了後はその台詞があったから、とある社会制度について考えさせられたりもした。うん、あれは残してくれててよかった。

逆に、原作にないものとしてはカエル男の自室にある殺人を示す人形の演出が個人的にはお気に入り。お気に入り、ってのも物騒な話だけれども、一連の事件をそれぞれ示すフィギュアが飾ってあって、あぁ彼にとっての「ミュージアム」ってこういうことなんだろうなとぼんやり思ってた。成程、確かにこれだと美術品に見えなくもない。

 

そして巷でも話題になっているけれど、妻夫木聡が凄かった。本当に。最初カエル男・霧島を彼が演じると聞いた時はイメージと違いすぎてげんなりしたけれど、予告編を見て度肝を抜かれました。同時に、期待値が物凄く上がった。

だってさ、


映画『ミュージアム』母の痛みを知りましょうの刑【HD】2016年11月12日(土)公開

これ、ブッキーじゃないでしょ(笑)

怪演とはまさにこの作品の彼のためにある言葉だと思いました。スクリーンに映るのは、下品で、気持ちが悪くて、狂気に充ち満ちた霧島早苗そのものだった。同じシアターにいたブッキーファンと思しきママさんたちが可哀想で仕方なかった(褒めてる)。加えて、これは演出の話も混ざるけれど、物語の中で話す彼の最後の言葉には一瞬彼をシリアルキラーから被害者に引き落とすような力があってよかった。そこまで見事に演じていた。あの台詞は原作にはないんだよなぁ。

あとね、「メトロポリタンミュージアム」を口ずさむ場面。あそこも原作のままで面白かった。ほんと、全体的に再現度がかなり高いと思う。

キャストの話でいえば、ベテラン俳優松重豊の芝居が本当によかった。さすがベテラン。あんな上司欲しいなぁっていう上司の役です。物語を通して誰が一番格好良いかって、彼の演じるセキさんなんだよなぁ。

 

あと、ONE OK ROCKの主題歌も合ってた。シリアスで疾走感のある曲。歌詞はほぼ英語で何言ってるかさっぱりなんですけど、今度見てみようかな。

 

ちょこちょこツッコミどころはあれど、個人的にはかなり良作だと思う。多分原作ファンからも支持される作品になったのではないかな。自分はもう一回観てもいいと思ってる。